「6月30日」はエジプトのスィースィー政権が正統性の根拠を置く出来事が生じた日である。2013年の6月30日にタハリール広場で行われた大規模デモは、エジプト軍が「アラブの春」を覆すために、その発生を黙認し支援し、しまいには扇動した、政治的な大衆動員だったと現時点からはいうことができる。国内では保守的民族主義の陣営だけでなく、リベラル左派からも一定の支持を得て、国外では湾岸産油国などの支援を得た。

スィースィー大統領は今年の6月30日も、テレビで国民に向けて演説し、2013年6月30日のタハリール広場での大規模デモこそが「革命」であると主張した。

2011年1月25日から2月11日にかけての18日間の大規模デモはムバーラク政権を失墜させた。通常はこれが2011年のエジプト「若者」革命と称されるが、エジプトの現政権は異なる歴史を広めようとしている。ここで「反革命」の大規模デモと言っていい2013年6月30日の動員は、スィースィー政権からは「革命」と呼ばれることになる。

ムバーラク大統領の退陣の後、移行期の管財人的役割を負った軍は、たび重なる選挙で勝利するムスリム同胞団と決裂した。そこで、軍の保有する強制力を用いて弾圧を行うとともに、大衆動員を行い、軍の政治介入に熱狂的に賛同する民衆の支持を誇示して、実権を取り戻した。

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