発言の変化は苦慮の表れでもある(C)EPA=時事

 

 日本銀行による大規模な金融緩和「マイナス金利」政策からの「出口戦略」に関する議論が喧しい。その背景には、黒田東彦日銀総裁の金融政策に対する発言の変化がある。

 5月15日に開催された『ウォール・ストリート・ジャーナル』主催のイベントで、黒田総裁は出口戦略について、「日銀は十分なツールを持っている」「誰が次の総裁になっても、うまく対応できると確信している」などと発言した。これまで、出口戦略について問われるたびに「時期尚早」との常套句を繰り返すだけだったことを考えれば、大きな変化と言える。

 また、5月27日の都内での自らの講演では、日銀が国債などの金融資産を大量購入していることについて、「市場での中央銀行の存在感が格段に増した」としたうえで、「市場の価格形成の分析に新たな課題をもたらしている」とも述べている。

 こうした発言の変化について、米国が景気の好調ぶりを受けて金融緩和から金融正常化に進んでいること、欧州中央銀行も超金融緩和を見直す方向に動いていることなどに加え、「黒田総裁の任期である2018年4月8日まで1年を切ったことも大きな要因ではないか」(エコノミスト)といった指摘がなされている。

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