連載小説 Δ(デルタ)(14)
2017年7月22日
【前回までのあらすじ】
「愛国義勇軍」が制圧した巡視船「うおつり」内で、特警隊員の市川に取り押さえられた義勇軍最年少兵士の張和平。思い出したのは、親も同然の「戦闘英雄」劉成虎に憧れて軍人を目指し、学校に合格したこと。そして、故郷瀋陽で、あるパーティーに誘われたことだった。
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ターコイズのように青く透き通った瞳の男が、ワインボトルを右手に微笑みながら張(ヂャン)のもとにやってきた。空軍のダークブルーの軍服を着ていなければ、瞳の色と言い、鼻梁の高く通った濃い顔立ちと言い、スラヴの血が混じった中央アジアあたりのカザフ人かトルコ人と勘違いしただろう。
「ウイグルのワインって、呑むの、はじめてだよね」
そう言いながら、男は左手で器用にはさみこんだ2脚のワイングラスの片方を張に差し出して、ルビーのような深い色合いの赤ワインをそそぎこむ。
「張和平(フーピン)の輝かしい未来と、われらが愛すべき偉大な爸爸、劉(リウ)将軍のさらなる栄光を祈念して、乾杯!」
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