モスクワでは7月23日、インターネット規制に反対するデモも行われた(C)AFP=時事

 

 ここまでの当欄では、ロシア人インターネットユーザーの個人情報を 国内に保存するよう求めるロシア政府と、インターネット企業との攻防を見てきた。国内に個人情報を保存するということは、それらをいつでもロシアの情報機関が閲覧できることを意味するだけに、ネット企業側の抵抗はかなり根強い。政府は操業停止をほのめかして従わせようとしているが、世界中に顧客を持つ巨大ネット企業との戦いはロシア政府にとっても容易ではないようだ。

 では、ロシア政府は何故これほどまでにインターネット規制を熱心に進めようとするのだろうか。

 ロシア政府、特に情報機関は、早い段階からサイバー安全保障に関心を抱いてきた。そもそも彼らは冷戦中から西側の情報機関と熾烈な盗聴合戦を行ってきており(米ソは原子力潜水艦で海底ケーブルに盗聴装置を取り付ける、などということまでやっていた)、インターネットがその延長上に位置づけられたのはある意味で当然のことであろう。

 たとえば2000年に策定された『情報安全保障ドクトリン』という政策文書では、外国製の情報関連機器が「情報兵器」となって国家、社会、個人の情報保護を脅かす可能性があると指摘されている。まだブロードバンド接続もおぼつかなかったころ から、ロシアの情報機関がいわゆる「バック・ドア」(情報を不正に窃取したり外部からの違法アクセスを行えるよう、プログラムの中に仕込まれた穴)を懸念していたことが分かる。

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