F15J戦闘機に乗り込む岸田文雄外相(C)時事

 

 7月14日(金)、河野克俊統合幕僚長は、定例記者会見において「平成29年度1四半期の緊急発進実施状況について」を発表した(2017年7月統幕報道発表資料)。

 その内容は、「緊急発進229回。前年度同四半期比52回減少。対象は、中国101回(全体比約44%、前年度同四半期比98回減少)、ロシア125回(同約55%、47回増加)。空域別には、北・中方面隊(北海道・東北・関東・中部・近畿)は増加、西・南西方面隊(中国・四国・九州・沖縄)は減少。特異飛行は、中国の小型無人機で、他は中国戦闘機、ロシアの情報収集機」であった。

 安全保障の専門家は、航空自衛隊の対領空侵犯措置の状況から、日本周辺空域の軍事的緊張を推量する。だが国民は、防衛省が公表する緊急発進の定量的情報だけでは、国の安全保障を実感できない。関心を深めようにも、自衛隊の行動にかかわる情報には、「保全」というバリアがあるから「すべてを公表せよ」と迫るのは、「安全が不安全に陥るリスク」を避ける意味でも控えなければならない。

数字だけでは理解は深まらない

「秘密保全」という「軍事的合理性」と国民の理解とのギャップを補完するのは、防衛・安全保障分野のメディアである。それは、「いま日本の空域で何事が起きているのか、起こる恐れがあるのか」、「日本の主権に対する侵害に自衛隊がどう対処しているのか」といった「対領空侵犯措置の意義」を、正しく国民に伝えることでもある。

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