2012年1月23日、モスクワで会談するプーチン(右)とキッシンジャー (C)AFP=時事

 

 プーチン大統領が耳を傾ける米国人はブレジンスキー(ジョンソン大統領の大統領顧問、カーター政権の大統領補佐官)とキッシンジャー(ニクソン政権、フォード政権の大統領補佐官・国務長官)の2人だといわれてきた。なぜなら彼らは追い込まれたロシア人の心理を知るとともに、ロシアが持ち得ている稀少な政治資本にも注意喚起を続けてきたからだ。

ロンドンからモスクワへ

 「ロシアを追い込めば、ロシアは自らの関与できる能力を世界秩序にとって不適切に使用することも辞さない」というロシア人の心理状況を的確に知る人は現実政治では減少を続けている。

 その1人のブレジンスキーは5月に逝去した。残るは94歳のキッシンジャーだけだ。ハンブルグのG20サミット(7月7~8日)でトランプとプーチンのはじめての会談が設定されたタイミングに合わせるように、キッシンジャーはロンドンからモスクワに到着した。6月27日のロンドンでの講演では、「戦略を欠く外交政策は世界的な無秩序に繋がる」と警告した。トランプ大統領が想定されていると解する聴衆は多かったが、メイ英国首相と会談した直後だったので、彼女への助言が反映したスピーチとの受けとめ方もあった。

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