7月29日、北朝鮮が発射したミサイルの対応に追われる、岸田文雄外相兼防衛相 (C)時事

 

 政界では「一寸先は闇」という言葉がよく口の端に上るが、この件は「瓢箪から駒」というところか。稲田朋美前防衛相の辞任によって岸田文雄外相が防衛相を兼務することとなった。防衛省の省昇格以前を含めても、事務代理を除けば、外務と防衛の閣僚を同じ人物が兼務するのは史上初めてだ。日本の外交・安全保障にとっては画期的な出来事と言える。

円滑とは言えない「外防」関係

 安全保障に携わるという点で、外務省と防衛省の役割は共通している。現に参議院では、外務省と防衛省との所管事項を同じ場で審議する外交防衛委員会が設置されて久しい。また外交と防衛軍事が不可分であることは、外交や安全保障の教科書を紐解けば直ぐにわかることだ。ヨーロッパで近代国際関係が形作られる過程では、軍人と外交官は未分化だった。外交が行き詰まれば軍事手段を行使するという基本線を思い起こせば、その一体性は明らかであろう。

 にもかかわらず外務省と防衛省の関係――内部では外防関係と言い習わす――は非常に円滑とは言い難いのが現状だ。発想の拠り所が違うのが最大の原因だと言えよう。防衛省はその設置法第3条第1項にある通り、「陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊(中略)を管理し、及び運営」することが任務だ。我が国最大の実力組織たる自衛隊をいかに管理運営するかが、常に優先的な判断基準となる。

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