敬意をもって敗者を讃えた勝者スピースと相棒(キャディ)のグレラー(今年3月の「デルテクノロジーズ・マッチプレー」にて、筆者撮影)

 

 イングランドの北西に位置する名門リンクスコース「ロイヤル・バークデール」で開催された今年の世界4大メジャー3戦目「全英オープン」の面白さは格別だった。その後味がとても甘美に感じられるのは、ジョーダン・スピース(24)とマット・クーチャー(39)という2人の米国人選手の優勝争いに、最小スコアを競い合う以上の「何か」があったからではないだろうか。

 最終日の後半13番で大ピンチに陥り、一度は単独首位の座から陥落しながらも見事な巻き返しで勝利を掴んだスピースは、決着後、敗者クーチャーを心から気遣った。

 スピースと入れ替わり、13番を終えて単独首位に立ちながらもスピースに敗れたクーチャーは、メジャー47試合目にしてまたも惜敗に終わった悔しさの中、それでも勝者スピースを心から賞賛した。

 そんな勝者と敗者の姿に心を打たれた人はきっと多かったはずだ。

讃え合う勝者と敗者

 最終日の戦いのハイライトは、その13番だった。スピースがティショットを大きく右に曲げ、ボールはギャラリーに当たってさらに右の小高い丘の上の深い茂みの土中に埋まった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。