カタールの首都ドーハに立ち並ぶ高層ビル群。LNGの賜物だ (C)AFP=時事

 

 サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)など4カ国によるアラブの同胞カタールとの断交は、解決の糸口が見えないまま対立が固定化しつつある。カタールの背後にいるイランとサウジの宗教・外交上の対立、カタールのムスリム同胞団への支援、さらに世界で最も豊かな国の1つになったカタールに対するサウジの嫉みなど、幾つかの背景分析が出ているが、エネルギーの観点では別の構図が浮かび上がる。それは「石油対天然ガス」の代理戦争である。世界最大の石油輸出国であるサウジと、世界最大級の液化天然ガス(LNG)輸出国のカタールが化石燃料の覇権をめぐって争っているとみれば、対立は予想以上に深刻で、長期化するとみるべきかもしれない。

顔ぶれが違う「産油国」と「産ガス国」

 石油と天然ガスは、炭化水素という点では基本は同じものであり、地下で生成される際の圧力や温度、地層構造などの条件の違いで液体か気体かに分かれたにすぎない。石油の出るところには、多くの場合は天然ガスも存在し、有力な産油国の多くは産ガス国でもある。2016年の産油量(BPエネルギー統計による)のトップ3は米国、サウジ、ロシアだが、そのうち米国とロシアは産ガス量でも1、2位を占めている。だが埋蔵量では、国によって石油と天然ガスのバランスに大きな違いが出る。石油が豊富な国(オイル・リッチ)と天然ガスが豊かな国(ガス・リッチ)にくっきりと分かれるのである。

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