湾岸戦争に勝利してクウェート市を解放し、喜ぶ米軍兵士。1991年2月27日 (C)AFP=時事

 

 前回筆者は、安倍晋三首相が提唱する「9条加憲」、つまり現行9条はいじらず、第3項として自衛隊の存在を明記する、という案について、一定の評価をしたうえで、これはファーストステップに過ぎない、さらなる国民的議論が必要だ、と述べた。それは国際法の観点からの議論だ。

 戦争に関連する国際法は、「ユス・アド・ベルム(jus ad bellum)」と「ユス・イン・ベロ(jus in bello)」の2種類があるが、今回は前者について議論してみたい。

「武力行使」のシステムを担う「国連憲章」

 武力行使を開始することの合法性を規定した国際法のことを、「ユス・アド・ベルム(jus ad bellum)=開戦法規」と呼ぶ。

 現代の国際法体系では、武力行使の合法性を各国家に無条件に付与してはいない。第2次世界大戦後の現在、「武力行使」が合法とされるのは、国家の自然権としての当然の権利である「自衛権の行使」(国連憲章第51条)と、国連憲章に基づく「集団安全保障体制」による「武力制裁」(国連憲章第42条)の場合、ということだ。国連安全保障理事会常任理事国を中心に「国連決議」のレベルを上げていき、最後は「武力制裁」をしてでも平和を守る。すべての国はこれに従う義務を負っているのである。ちなみに、国連憲章第42条の条文は以下の通りだ。

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