2001年3月、えひめ丸沈没事故の責任を問われ、海軍査問委員会に出席した米原潜「グリーンビル」のワドル前艦長 (C)時事

 

 前回は、「ユス・アド・ベルム(jus ad bellum)=開戦法規」を軸に憲法問題を論じてみた。今度は「ユス・イン・ベロ(jus in bello)」の観点から述べてみたい。

戦争にも厳しい「国際ルール」がある

「ユス・イン・ベロ」は、「交戦法規」とか「武力紛争法規」と訳される。「ユス・アド・ベルム」が戦争そのものの正当性に関する国際法であるのに対し、「ユス・イン・ベロ」は、宣戦布告の有無にかかわらず交戦状態中の規定、つまり戦争のルールであり、一般には「国際人道法」、「戦時国際法」と呼ばれているもののことである。

 その中には、陸戦・海戦・空戦のルールはもちろん、武器の制限や禁止、一般市民や降伏兵・捕虜の取り扱いなど多岐にわたっており、これに違反した場合は「戦争犯罪」として処罰の対象になる。

 その1つの例が、第2次世界大戦後の極東軍事裁判における「BC級戦犯」だ。

 B級戦犯は、「通例の戦争犯罪」=国際人道法における交戦法規違反行為を犯した者であり、C級戦犯は「人道に対する罪」=国家もしくは集団によって一般の国民に対してなされた謀殺、絶滅を目的とした大量殺人、奴隷化、捕虜の虐待、追放その他の非人道的行為を犯した者である。戦後、BC級戦犯として約5600人が逮捕投獄され、約1000人が裁判の結果死刑となった。日本軍は、明治期までは万国法(国際法)を極めて重視し、これをきちっと守る軍隊として国際社会の尊敬を勝ち取り、世界の一流国の仲間入りをした。しかし昭和期に入ってからは、国際連盟からの脱退など、今の中国や北朝鮮のように、国際法を独自解釈する国家になってしまっていたのだ。

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