「制裁強化法」成立後の米露「悪夢の選択」

執筆者:名越健郎2017年8月12日
せっかくの初の首脳会談だったが……(C)AFP=時事

 

 トランプ米大統領が8月2日、議会を通過した対露制裁強化法に署名、成立させたことで、米露関係が長期にわたって冷却化する見通しとなった。プーチン大統領は報復として、ロシアにある米在外公館のスタッフを大幅削減するよう指示。9月には欧州正面で大規模な軍事演習を行うほか、米露宇宙協力縮小、核不拡散協力停止などの対抗策を検討している。ロシアが世界的に反米外交を強化することで、日露間の北方領土交渉や北朝鮮核問題にもマイナスの影響が出そうだ。

関係改善の期待が消滅

 成立した法案は、制裁緩和に際して議会の承認を必要とするほか、ロシアのエネルギー・防衛産業とのビジネスや金融取引の制限を規定している。上院は98対2、下院は419対3という圧倒的大差で可決。昨年の米大統領選へのロシアのサイバー攻撃に対する、米議会の反発の強さが示された。トランプ大統領は「米政府の交渉権限を制限し、欠陥が多い」と批判しながら、議会との対決を回避して署名した。

 トランプ大統領とプーチン大統領は7月7日、ハンブルクで初の首脳会談を行い、シリア南西部での休戦で合意するなど一定の歩み寄りを見せたが、米議会が大統領の対露融和政策を封じ込めた形だ。トランプ大統領が独断で制裁の緩和に動くことは不可能になった。

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