2002年9月、日朝首脳会談を終えて「平壌宣言」に署名し、握手する小泉純一郎首相(左)と北朝鮮の金正日総書記[代表撮影](C)時事

 

小此木政夫:日本の役割は、冷戦時代から何も変わっていない。北朝鮮との関係を改善して、朝鮮半島に安定的な国際システムを構築する、ということです。簡単に言えば、北朝鮮を安定的な国際システムの中に取り込んで、核兵器やミサイルがなくても生き残れることを教える、ということです。日韓関係正常化がモデルです。その過程で拉致問題も解決するべきでした。国交正常化し、経済協力を提供すれば、日本の立場は格段に強化されたことでしょう。

 でも今は、そういう発想はなく、拉致問題は解決されないまま大きく横たわっている。「小泉訪朝」以後、日本外交はほとんど思考停止状態です。2014年に「ストックホルム合意」(編集部注:日朝政府間協議で成立した合意。日朝国交正常化交渉の継続、拉致被害者などの再調査、それらの見返りとしての制裁の緩和などがその内容)があったものの、やはり何も変わらなかった。

政策に反映されない「接触」

平井久志:外務省は非公式という形で、北朝鮮と接触をしています。去年も、把握されているだけで9、10、11月とやっていますし、ぼくの知ってる範囲では、今年に入っても5月にやっていますよ。これは、ぼくは、意味のあることだと思う。今われわれが一番しなければならないのは、北朝鮮が何を考えているかを知ることなんです。アメリカは当局者対話をしないけれども、実質それと変わらない国務省のOBとか学者たちが、北朝鮮と接触して彼らの意見を聞いている。その報告は全部国務省にあがっています。アメリカはそういう形で取材をしているわけです。

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