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 これまで述べてきたように、1694年に設立されたイングランド銀行は、戦費調達を目的とした「政府の銀行」であった。ただし、19世紀初頭までは、特権を認可された複数の銀行が独自に銀行券を発行しており、イングランド銀行はそうした銀行の1つであるにすぎなかった。

 しかし、19世紀に金融恐慌が発生し、多くの銀行の銀行券が無効になる事態が発生した。このため、通貨発行権をイングランド銀行に独占させる「ピール銀行条例」が1844年に制定され、イングランド銀行以外の銀行による発券が禁止された。こうして、イングランド銀行が中央銀行としての地位を固めた。

 一般の文献では以上のように説明されているが、ニーアル・ファーガソン『マネーの進化史』(早川書房)によれば、イングランド銀行の紙幣発行独占権は、1826年から確約され、地方銀行による紙幣の発行は禁止された。ただし、独占権が認められるのは、ロンドンから半径65マイル圏内。彼の説明によると、「ピール銀行条例」が決めたのは、イングランド銀行の商業銀行業務と振り出し部門(発券部門)への分割だ。

 イングランド銀行に続き、フランス銀行(1800年)、オランダ中央銀行(1814年)、ベルギー国民銀行(1850年)、ドイツ・ライヒスバンク(1876年)、日本銀行(1882年)などの中央銀行が設立された。なお、世界で最も古い中央銀行はスウェーデンのリクスバンクと言われるが、同行が通貨の独占発行権を獲得したのは1897年である。

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