マネーの魔術史 (13)

ヨーロッパでは中央銀行が広がるが、アメリカでは挫折

執筆者:野口悠紀雄 2017年8月24日
エリア: 北米 ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 これまで述べてきたように、1694年に設立されたイングランド銀行は、戦費調達を目的とした「政府の銀行」であった。ただし、19世紀初頭までは、特権を認可された複数の銀行が独自に銀行券を発行しており、イングランド銀行はそうした銀行の1つであるにすぎなかった。

 しかし、19世紀に金融恐慌が発生し、多くの銀行の銀行券が無効になる事態が発生した。このため、通貨発行権をイングランド銀行に独占させる「ピール銀行条例」が1844年に制定され、イングランド銀行以外の銀行による発券が禁止された。こうして、イングランド銀行が中央銀行としての地位を固めた。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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