「キルチェーン」の要であり、北朝鮮へのメッセージも併せ持つ米空軍の爆撃機B1B[US AIR FORCE提供] (C)AFP=時事

 

 8月21日、米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」(以下、「乙支」)が始まった(8月31日まで)。そこで、そもそも「乙支」とはいかなる演習なのか、それが米朝関係に及ぼす影響とは何かについて、論じてみたい。

韓国軍主体の指揮所演習

 米韓合同軍事演習は、1年に3回行われる。そのうち春にあるのが「キー・リゾルブ」と「フォールイーグル」だ。前者は指揮所演習(図上演習)で、後者は米海軍の空母も参加する、大規模な実動演習である。一方「乙支」は、例年8月から9月に行われる指揮所演習だ。

 年に2度も図上演習が行われていることに疑問を持つ向きがあるかもしれない。だがそれには理由がある。春の演習「キー・リゾルブ」は在韓米軍が主体で、夏の「乙支」は韓国軍が主体という違いがあるのだ。

 それには、米韓間に存在する「戦時作戦統制権」の問題がある。

 1950年に朝鮮戦争が勃発し、自国だけでは対応できなかった韓国軍は、戦時における作戦統制権を国連軍に移譲した。1978年、米韓両国の合意により、当時新たに発足した米韓連合軍司令部がこれを継承することになった。これにより、朝鮮半島に有事が起こった場合、在韓米軍司令官が米韓連合軍を指揮することになった。だから「キー・リゾルブ」や「フォールイーグル」は、作戦統制権が米軍にあるということが前提での演習、ということになる。

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