シリア内戦と比較して、あるいはシリアとイラクの「イスラーム国」と比較して、報じられることが少ないのだが、同程度あるいはそれ以上の人道的悲劇が深刻化しているのはイエメンである。フーシー派がハーディー政権を放逐し全土を掌握しかけた2015年3月に、サウジ・UAE主導で開始された軍事介入では、米・英あるいは北朝鮮など、各国から買い集めてきた高額で大量の兵器の投入による空爆と共に、フーシー派支配地域(国土の主要部分)への禁輸措置が行われ、医療品や食糧の不足を原因として、大規模な飢餓と疫病が発生している。

顕著なのはコレラの蔓延である。

ニューヨーク・タイムズ紙はイエメン情勢とコレラ蔓延について、的確な地図や図表を作成してホームページに載せている。

"'It's a Slow Death’: The World’s Worst Humanitarian Crisis," The New York Times, August 23, 2017.

イエメンでのコレラ蔓延は、サウジの国際イメージにとって極めて都合が悪い。6月に、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はイエメンのコレラ対策に6600万ドルを寄付すると発表、挽回を図っているが、そもそもサウジの軍事介入が引き起こした惨禍という批判は免れない。

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