解任されてしまったスティーブン・バノン米大統領首席戦略官(左)。トランプ大統領の“腹心”と言われていたが……。 (C)AFP=時事

 

 トランプ米政権の黒幕として悪名高かったスティーブン・バノン首席戦略官が事実上解任されたことが、大きな反響を呼んでいる。しかしそれがトランプ政権の今後について何を意味するのかは答えが出ていない。たとえば、バノン氏が巷間いわれているように、トランプ政権の中の対立する2つのグループ、「現状破壊派」と「現実派」のうちの前者の指導者で、かつトランプを陰で操る男、ということで割り切れるのであれば、今後のトランプ政権の方向性は、ジョン・ケリー首席補佐官やジェームズ・マティス国防長官らの現実派の主導のもとに正常化に動いていく、という希望が出てくるはずだ。しかし米国内の論調からは、現実派の立場からの明るい見通しというものはほとんど出てこない。なぜなのだろうか。

「振り付け」はしていない

 バノン氏解任のきっかけは、バージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者のデモとそれに反対するデモとの衝突について、トランプ大統領が両者を同等に批判するコメントをしたことだったという見方がある。なぜなら、バノン氏は、白人至上主義者であるオルタナ右翼と政権を繋ぐ中心人物と目されていたからだ。そしてトランプ大統領の立場が、共和党議会からも厳しい批判に晒されている中で、バノン氏に対する風当たりが強くなったからだ。

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