7月10日、原子力規制委員会の意見聴取で、規制委の田中委員長(右から2人目)らから突き上げをくらった東電力の小早川社長(左)と川村会長(左から2人目)。川村会長もこの頃は能弁だったのだが……(C)時事

 

 福島第1原子力発電所(フクイチ)事故で事実上破綻して6年、国有化されて5年――。そんな東京電力ホールディングスの「救世主」として、今年6月に鳴り物入りで迎えられた会長の川村隆(77)率いる新経営体制が、早くも壁に突き当たっている。発足直後の報道インタビューで、放射性物質トリチウム(三重水素)の残る汚染水を海洋放出する方針を固めたと「明言」し、大騒ぎになったことは周知の通り。漁業団体などの猛反発ですぐに取り消したものの、川村が「判断したとは言っていない。意味が違う」と、通り一遍の釈明で済ませようとしたことが、関係者の不信感を一段と増幅させた。日立製作所のV字回復の功労者という“金看板”はあっという間にメッキが剥がれ落ちてしまった。

 一方、当初は「はらわたが煮えくり返る」と川村発言に激怒していた原子力規制委員会の委員長・田中俊一(72)は、その後みるみるトーンダウン。9月18日の退任を目前に、唐突に柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機の安全審査に「合格」内定を出すなど、相変わらず掴みどころのないパフォーマンスで電力業界や福島、新潟の地元関係者らを戸惑わせている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。