独総選挙の焦点は「メルケルの副産物」の扱い

執筆者:佐藤伸行2017年9月19日
AfDの「共同筆頭候補者」となった新星ヴァイデル氏(左)と重鎮ガウラント氏。(C)AFP=時事

 

 最新の各種世論調査を信じれば、9月24日に実施されるドイツ連邦議会(下院)選挙では、中道右派の与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU・CSU)を率いるアンゲラ・メルケル首相の4選が確実視されています。一方の国民政党である中道左派・社会民主党(SPD)が擁立した首相候補マルティン・シュルツ前欧州議会議長は、当初こそ旋風を巻き起こしたものの、ほどなく急激に失速し、まったくの竜頭蛇尾に終わった観が否めません。SPDは前回2013年総選挙以上の惨敗を喫する可能性も出てきています。

ナチズムとの親和性も

 メルケル首相4選の成否という観点からすれば、ドイツ総選挙は今回もまた無風に近いとあって、世間の関心は、反イスラム・反移民、反エスタブリッシュメント(既得権益層)の新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がどれほど多くの議席を獲得するかに移っていると言っても過言ではないでしょう。

 AfDは「排外主義的極右政党」ないし「右翼ポピュリズム政党」などと定義されています。9月半ばの世論調査では、AfDの支持率は10~12%となっており、議席を獲得するのは確実です。極右政党が連邦議会に進出するのは戦後のドイツで初めてとなりますが、70議席前後(現在の総議席数は631)を獲得し、議会第3党の座に躍り出る見通しも出てきました。戦後のドイツには、共和党とか国家民主党(NPD)といった極右政党が現れ、一時は社会に脅威を与える存在として警戒されましたが、連邦議会に進出することはついぞありませんでしたから、AfDの登場はまさに歴史的事象と言えます。

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