田舎町での事件取材でも首相官邸の取材でも、記者は「特ダネ」を追いかけ続けている。そこで、日本の報道機関が生み出した取材手法が「夜討ち朝駆け」だ。早朝や深夜に取材対象者の自宅に日参し、昼間は話しにくい本音や秘密を聞き出す独自取材である。

 酔って帰宅する警察幹部を自宅の玄関先で待ち伏せたり、早朝、出勤前の政府高官の官舎に押し掛けたり、今日もまた、日本各地でそんな取材が繰り返されている。私も記者時代の国内勤務では、相当な回数の夜討ち朝駆けをやった。忙しくなると、毎晩の睡眠時間3~4時間。寝不足で頭痛は慢性化し、胃腸は荒れ、薬を手放せない時期もあった。

 しかし、そうした「努力」は多くの場合、徒労に終わった。若いころには、警察や外務省の幹部宅前に夜間5~6時間も張り込んで帰宅を待ったこともあったが、日付が変わるころに赤ら顔で帰宅した幹部はのらりくらりと質問をはぐらかし、家の中に入ってしまった。

 挫折感に苛まれている時、しばしば思うことがあった。海外の記者たちはどうやって取材しているのだろう?

 その後、私はヨハネスブルグとワシントンに通算7年間駐在する機会に恵まれ、その気になれば、外国のジャーナリズムの実態について深く調べることもできた。だが、日々の仕事に追われ、結局何もせずに任期を終えてしまった。

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