慣例とはいえ、国民は誰も万歳とは思っていない(C)時事

 

 有権者に問うという手続きなくして国政上の重要案件の審議に弾みをつけることは出来ないというのが民主主義下での政治運営の基本であろう。日本社会の課題は国内においては高齢化の進展に伴う財政上の課題が深刻さを増すとともに、就職氷河期で割を食った世代に再挑戦の機会を与えるという課題も、彼らの加齢とともに深刻度が高じてきている。日本社会の活力の持続性維持が正面から論じられなければならない局面なのだ。

 また北朝鮮の核武装とミサイル発射という日本にとっての過酷な安保課題も、第2次世界大戦後にはじめて外交関係の根底的な見直しを迫る規模のものになっている。米国、中国、ロシア、韓国との関連が、対北朝鮮対応を巡って具体的に問われる厳しい局面なのだ。外交のこれまでの実績が、そして今後の日本の対外関与の基本が広く論じられなければならない。日本をとりまく政治空間には、このように内側に向けて大きな亀裂を生みかねない諸力が押し寄せている。総選挙の争点形成はどのように推移するのか。

微弱だった「未来への目線」

 2025年の迎え方が日本の持続性にとって決定的に重要だという指摘はこの数年繰り返しなされてきた。それはもっぱら日本社会の高齢化と、そのもとでの社会活力に関わる視点からであった。戦後のベビーブーマー世代が一斉に75歳以上になるのがこの年だからである。すでに女性の3人に1人が65歳以上となっているが、2025年には日本の総人口の3分の1が65歳以上となる。年金支給や医療保険制度の在り方を改めて論じなければならない時期がとうに到来しているにもかかわらず、社会保険料の概念さえも社会的定着を欠いているのが実際だ。

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