経済の頭で考えたこと (94)

「財政規律」「安保・外交」を総選挙の争点にせよ

執筆者:田中直毅 2017年10月2日
エリア: 北米 アジア
慣例とはいえ、国民は誰も万歳とは思っていない(C)時事

 

 有権者に問うという手続きなくして国政上の重要案件の審議に弾みをつけることは出来ないというのが民主主義下での政治運営の基本であろう。日本社会の課題は国内においては高齢化の進展に伴う財政上の課題が深刻さを増すとともに、就職氷河期で割を食った世代に再挑戦の機会を与えるという課題も、彼らの加齢とともに深刻度が高じてきている。日本社会の活力の持続性維持が正面から論じられなければならない局面なのだ。

 また北朝鮮の核武装とミサイル発射という日本にとっての過酷な安保課題も、第2次世界大戦後にはじめて外交関係の根底的な見直しを迫る規模のものになっている。米国、中国、ロシア、韓国との関連が、対北朝鮮対応を巡って具体的に問われる厳しい局面なのだ。外交のこれまでの実績が、そして今後の日本の対外関与の基本が広く論じられなければならない。日本をとりまく政治空間には、このように内側に向けて大きな亀裂を生みかねない諸力が押し寄せている。総選挙の争点形成はどのように推移するのか。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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