高井宏章のおカネの教室チャンネルより (6)

なぜ超円安とインフレが止まらないのか――日銀の異次元緩和が残した課題 東短リサーチの加藤出さんに「高井さん」が聞く!

執筆者:高井宏章 2024年7月4日
タグ: 日本 マネー
エリア: アジア
異例の「超円安」に歯止めがかからない。3月にマイナス金利とYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の解除に踏み切ったものの、日銀の金融政策正常化のペースは遅く、内外金利差に起因する円安圧力がおさまる気配はない。その背景にはアベノミクスの一環として2013年、黒田東彦総裁時代に始まった「異次元緩和」のツケがある。膨張した国債発行残高と日銀当座預金が利上げのハードルを上げ、それを見透かした投機筋と個人の投資マネーの円売りは勢いを増す。未曽有の円安に、日銀と政府はどんな手を打つべきか。日銀ウオッチャーの第一人者、東短リサーチの加藤出氏に語ってもらった。 *YouTubeチャンネル「高井宏章のおカネの教室」のライブダイジェストをもとに、主な発言を抜粋・編集してあります。(聞き手、文・構成 高井宏章)

 

異常なレベルの「超円安」

高井 新型コロナのパンデミックの前は1ドル110円前後が円相場の居所だった。その後、世界的なインフレが来て、あっという間に 150円を抜け、世界が変わってしまった。

加藤 通貨全体の強さを示す名目実効為替レートをコロナ前の2019年末と比較すると、円は1人負け状態だ。かつては円とスイスフランは非常時のセーフヘイブン(避難先)と言われたが、円は完全にそこから脱落した。苦しい新興国の通貨のように売られている。

高井 現地で体感する内外物価差は異常なレベルだ。

加藤 ニューヨークのグランドセントラル駅近くのカット専門店QBハウスの料金は円換算で5600円ほど。それでも現地の客は「安い割にクオリティが高い」と話していた。賃金でいえば、米国のスーパーマーケットの店長の方が日銀総裁より年収が多い。さすがに、これは何かがおかしい。

高井 そのおかしさは購買力平価と実勢レートの乖離に表れている。

加藤 IMF(国際通貨基金)の試算では、購買力平価つまり日米の物価がざっくり同じになる為替レートは1ドル91円。現状はそれより7割も割安だ。1982年に1ドルが277円だった頃で、購買力平価対比の割安度は28%程度だった。外国人観光客が日本にあふれ、日本人が米国に行けば何を見ても高いとため息が出るはずだ。物価変動も加味した実質実効為替レートは1970年のレベルを下回ってきている。1ドル360円時代より今の円の実質的価値は低い。かなり酷い状況だ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
高井宏章(たかいひろあき) 経済コラムニスト・YouTuber 元日経新聞編集委員(2023年6月に日経を退職)。日経在籍時にはマネーのまなびチャンネルで「教えて高井さん」を担当。「日経ニュースプラス9」のキャスターも務めた。2016〜18年ロンドンに駐在。2018年に「高井浩章」名義で出版した『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』(2024年に新潮文庫化)は10万部超のロングセラーとなっている。他の著書に、『漫画版 おカネの教室』『「おカネの教室」ができるまで: 兼業作家のデビュー奮闘記』『ポドモド』など多数。Twitter、noteで経済にとどまらず、書評や教育論など幅広い情報を発信。1972年生まれ、愛知県出身。三姉妹のお父さん。趣味はLEGOとビリヤード。
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