異常なレベルの「超円安」

高井 新型コロナのパンデミックの前は1ドル110円前後が円相場の居所だった。その後、世界的なインフレが来て、あっという間に 150円を抜け、世界が変わってしまった。

加藤 通貨全体の強さを示す名目実効為替レートをコロナ前の2019年末と比較すると、円は1人負け状態だ。かつては円とスイスフランは非常時のセーフヘイブン(避難先)と言われたが、円は完全にそこから脱落した。苦しい新興国の通貨のように売られている。

高井 現地で体感する内外物価差は異常なレベルだ。

加藤 ニューヨークのグランドセントラル駅近くのカット専門店QBハウスの料金は円換算で5600円ほど。それでも現地の客は「安い割にクオリティが高い」と話していた。賃金でいえば、米国のスーパーマーケットの店長の方が日銀総裁より年収が多い。さすがに、これは何かがおかしい。

高井 そのおかしさは購買力平価と実勢レートの乖離に表れている。

加藤 IMF(国際通貨基金)の試算では、購買力平価つまり日米の物価がざっくり同じになる為替レートは1ドル91円。現状はそれより7割も割安だ。1982年に1ドルが277円だった頃で、購買力平価対比の割安度は28%程度だった。外国人観光客が日本にあふれ、日本人が米国に行けば何を見ても高いとため息が出るはずだ。物価変動も加味した実質実効為替レートは1970年のレベルを下回ってきている。1ドル360円時代より今の円の実質的価値は低い。かなり酷い状況だ。

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