経済の頭で考えたこと
(103)
米「INF全廃」離脱に見える「核なき世界」追求の衰え

1987年12月、INF全廃条約に調印するレーガン米大統領(右)とゴルバチョフ・ソ連書記長。ワシントンにて (C)AFP=時事
1987年12月に米ソ間で中距離核戦力(INF)全廃条約が結ばれた。ロナルド・レーガン米大統領とミハイル・ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長(いずれも当時)との間に成立した核軍縮への第一歩という道程の位置づけを巡って、当時も諸説があった。
私もこれにコメントをしたが、今から思えば、当時は歴史的意味を過少にしか評価できなかったと言ってよい。それは、1980年代が米ソ間のみならず、欧米全域をも巻き込んだ苛烈な核戦争の脅威が幾重にも広がった、ということで特徴づけられることに由来する。核の脅威からの脱却を図る人類の英知の存在を疑問視していたわけではないが、英知を引き裂く産軍複合体のエゴが両陣営に根深く存在している点を、どう受け止めるかがポイントだった。暗部を当時の私は余りにも過大視していたと言える。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン