レカネマブの副作用と遺伝子検査の間に横たわる難問|伊東大介・慶應義塾大学医学部生理学特任教授(3)
長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。慶應義塾大学医学部神経内科特任教授の伊東大介氏に、レカネマブの副作用と遺伝子検査の関係、投与方法について話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。
日本人の患者の約6割がApoE-ε4遺伝子を持つ
――米国では、レカネマブ投与前に遺伝子検査を受けることが推奨されている、という話もありました。これは、どのようなことなのでしょうか。
「アルツハイマー病には遺伝子リスクがあることがわかっています。ApoE(アポイー)と呼ばれる遺伝子です。ApoE遺伝子には、ε2、ε3、ε4、の3つの型があります」
「日本人の約85%がApoE-ε3遺伝子を持っています。しかし、2割弱の方はApoE-ε4遺伝子を持っていることが明らかになっています。ApoE-ε4遺伝子を持つ人はアルツハイマー病を発症するリスクが高い傾向にあります」
「もちろん、ApoE-ε4遺伝子保有者すべてが、アルツハイマー病になる、というわけではありません」
「遺伝子は、父親由来と母親由来のものの2つが対になっています。2つのうちの1つがApoE-ε4遺伝子だった場合は、アルツハイマー病になるリスクが3倍になります。さらに、2つともApoE-ε4遺伝子である人がアルツハイマー病になるリスクは、ApoE-ε4遺伝子を持たない人の30倍程度であると言われています」
「日本人のアルツハイマー病患者のうち、約6割の人がApoE-ε4遺伝子を持っているということが最近の研究で明らかになっています」
「ただ、先ほど申し上げたように、ApoE-ε4遺伝子を持っているからといって、将来確実にアルツハイマー病になるというわけではありません。したがって、ApoE遺伝子検査をレカネマブ投与のための診断に用いることは適切ではありません」

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