命を救うため、アリは仲間の手足を切断していた

2024年7月21日
タグ: 野生生物
スイスのローザンヌ大学の実験室で撮影された2匹のオオアリ(Camponotus fellah)。右のアリが、左のアリの脚の傷を手当てしている (C)Bart Zijlstra/Handout via REUTERS
交通事故や戦争で大怪我をし、重度の組織破壊や感染が起きた場合、外科医によって手足の切断が行われることがある。7月2日に学術誌『Current Biology』に掲載された研究では、こうした処置を行うのが人間だけではないことがわかった。論文によると、一部のアリが、負傷した仲間の生存率を向上させるために手足の切断を行っていた。

[ワシントン発/ロイター]研究チームが観察したのは、アメリカ南東部の一部に生息するフロリダオオアリ(学名:Camponotus floridanus)。赤茶色で、体長1.5センチを超えるくらいの大きさだ。

 フロリダオオアリは巣の仲間が怪我をしたときに、負傷した手足の部分を口器できれいにしたり、噛み切って切断することで治療していた。治療方法は傷の場所によって異なり、傷が脚の上部にあった場合は必ず切断し、下部にあった場合は決して切断しなかった。

 ドイツのヴュルツブルク大学の昆虫学者であり、論文の筆頭著者であるエリック・フランク氏は「この研究は、ヒト以外の動物が他の個体の命を救うために手足の切断を行う様子を初めて記録したものだ。このようにアリが負傷した個体を治療する『医療システム』は、動物の中でも最も洗練されていると言え、人間社会の医療システムに劣らないほどだ」と述べた。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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