嫌悪しながら大量輸入、歪んだ「遺伝子組み換え作物大国」日本の奇妙な食糧安全保障

執筆者:山口亮子 2024年7月17日
タグ: 日本
エリア: アジア
日本で商業栽培されている遺伝子組み換え作物は「青いバラ」と「青い胡蝶蘭」だけにとどまる[シンジェンタの遺伝子組み換えトウモロコシ「VIP」](フィリピン・パンガシナン州にて筆者撮影)
遺伝子組み換え作物への嫌悪感情は日本国内に根強いが、年間輸入約3000万トンの穀物のうち半分以上は遺伝子組み換えだと推定される。国内でも153品種が栽培可能であるものの、反対運動や風評被害を恐れ農家は生産に乗り出せない。つまり日本は遺伝子組み換え作物に正しく向き合うことを忌避しつつ、カネに物を言わせているのだが、一方で食糧安全保障を叫んで農家に危機対応を強制するのは明らかな矛盾と言うべきだ。フィリピンにおけるトウモロコシ栽培のルポとともに日本の課題を例示する。

 遺伝子組み換えとは、ある生物から取り出した遺伝子を他の生物に組み込んで、新しい性質を持たせる技術だ。遺伝子組み換え作物を話題にすると、「危険じゃないか」とよく言われる。最近も、都内在住の女性と会食中に「危なくないの」と聞かれた。その時、彼女はドレッシングのかかったサラダをほおばっていた。

 ドレッシングによく使われる食用油やコーンスターチは、遺伝子組み換え作物を原料とする場合が多い。彼女は不安を語ったその口で、遺伝子組み換え作物の加工品を摂っていた可能性が高い。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
山口亮子(やまぐちりょうこ) ジャーナリスト 京都大学文学部卒、中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信社を経てフリーになり、農業、地域活性化、中国について執筆を続けている。主な著書に『ウンコノミクス』(2025年4月7日発売、集英社インターナショナル新書)、『日本一の農業県はどこか 農業の通信簿』(新潮新書)、『人口減少時代の農業と食 』(共著、ちくま新書)、『誰が農業を殺すのか』(共著、新潮新書)。雑誌や広告などの企画編集やコンサルティングを手掛ける株式会社ウロ代表取締役。
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