
ヒートアイランド対策でも期待の下水熱
夏の東京はうんざりするほど暑い。温暖化のせいで、いまや春からして暑い。
「都会の暑さは、半分は建物の中を涼しくするための暑さ。そんな感覚が私にはあって。夏にエアコンを動かせば、室外機がひたすら、建物の外に温かい空気を出し続ける訳ですから」
こう指摘するのは、新潟市にある株式会社興和(こうわ)水工部の小酒欽弥(こざけ・きんや)さん。同社は建設工事やコンサルティングを手掛ける。
水工部は、読んで字のごとく、水道や下水道といった水に関わる工事を担う。雪国だけに、路面に積もった雪を水を流して融かす「消雪パイプ」の工事に端を発している。
こうした融雪システムを主力とする同部が、新規事業として活用するのが「下水熱」。下水道の持つ熱である。
下水管の中は、外気と比べ、冬は温かく、夏は冷たい。下水熱は、冬に雪を溶かし、夏はクーラーに使える。しかも、「下水の中に熱を逃がしてくれるので、室外機のように直接外気を温めてしまうことはない。ヒートアイランド現象の抑制になるんじゃないか」(小酒さん)というのだ。
ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が郊外に比べて上がること。原因として、地表が建物や舗装で覆われて熱を溜め込みやすいこと、建物の密度が高く熱が逃げにくいこと、人工的な排熱が多く大気を温めることが挙げられる。人工的な排熱は、施設や工場、家屋、自動車などに由来し、エアコンも含む。
下水熱であれば、排熱が外気を温める問題と無縁だというのだ。
90万世帯の熱利用を賄える
「家庭から出た汚水が処理場に行くまで、街中のマンホールの下を走っているところから、下水熱を取っているんですね。各家庭で出て、ただ下水道に流してしまっていた熱を再利用しようというシステムです。人が多く住んでるところであれば、利用価値があります」(小酒さん)

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