AfDの「顔」として選挙を戦い、大躍進に導いたガウランド副党首(左)とバイデル氏 (C)AFP=時事

 

 9月24日、ドイツで実施された総選挙の結果は、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の勝利だったが、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が12.6%を獲得、議席総数709の連邦議会にあって94議席を獲得することとなり、波紋を呼んでいる。

 事は議席の多寡だけでない。そこにドイツ社会が抱える深刻な問題が映し出されていることが重要である。それを一言で言うならば、「社会の中に充満する怒り・不安」であり、「社会の現状に満足する層と、現状に危機感を覚え変革を訴える層の両極化」である。背景にあるのは、言うまでもなく「未曽有の規模で流入する難民」である。難民問題はトルコ政府との協定によりひとまず沈静化したと見られていたが、事実はそうでなかった。

 今後のドイツ政治は、難民問題、及び、12年間のメルケル政権の果実をめぐり引き起こされた「社会の亀裂」の修復を焦点に展開することになる。現在連立交渉が進行中で、ジャマイカ連立(CDU/CSU、FDP、緑の党の3党連立)が可能性として取りざたされるが、これは大きく括れば「現状維持派」であり、連立から外れるAfDと左派党が代表する「怒れる民衆」に対峙する(社会民主党(SPD)は立ち位置を模索中)。つまり、ドイツ政治は今後、現状維持派が怒れる民衆に対峙しつつ、いかに前者が後者をなだめ、自らの陣営に取り込んでいくかが焦点になる。

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