中東の変動を逐一伝える情報の奔流の中で

執筆者:池内恵2017年10月2日

半月ほど、この欄でのつぶやきが途絶えてしまった。

この欄の更新が止まる時は、中東で何か深いところで変化が起こっていると考えていただきたい。

重要な、しかし精査を要する情報が中東から奔流のように流れてくると、処理能力を超えてしまう。「面白いニュース」は無数にあるが、それを裏の裏の文脈の解説や慎重な留保を抜きに読者に伝えると、その意味を誤解してしまう人が出てしまいかねない。「中東通信」欄はツイッター風の軽やかな装いを凝らしてはいるものの、フォーサイトの他の論考と同様に、何年もたって読み返してみても、外れていたと言われることが極力ないように、徹底的に検討を重ねてから発信している。それがフェイスブックツイッターで筆者が私的に行っている気楽で雑多な情報発信と、「中東通信」欄の違いである。

近年は、フェイクニュース(捏造ニュース)や、ディスインフォメーション(意図的に誤解をさせ世論を誘導する情報)であることが濃厚な情報が、堂々と中東の一流メディアに載って流れてくる。誰がどのような意図を持ってそのような情報を流してくるのかを考察することこそが中東の秩序再編の未来を見通す手掛かりであるが、個々のニュースの読み解きには職人芸を要することになり、いきおい、そのまま不用意に日本の読者に転送してしまうことは憚られる。これらの情報を精査する専門家の間の情報交換も、最近は研究会などで集まる以前に、ツイッターなどで、国を超えて、即座に行われるようになっているが、そのような素早い情報の流れと議論のやりとりについていくのは、24時間途切れのない作業となる。

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