福島で選挙戦第1声を上げた安倍首相(C)時事

 

 総選挙の幕が切って落とされた。争点の1つである北朝鮮を想定した安全保障問題に関連して、議論の波紋を広げるために敢えてこの論考を提示したい。

 北朝鮮の「核とミサイル」に対しては、日本・米国・中国・韓国だけではなく、国際社会の関心と警戒のレベルを拡大し、国連制裁強化を決議した。しかし、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の言葉の応酬は、制裁を効果的にするどころか、かえって互いに武力行使に言及して情勢を緊張させている。

 ロシアのラブロフ外相は、それを「幼稚園でのけんか」(インタファクス通信/産経新聞9月23日)と喩え、双方に冷静な対応を促した。しかし、安倍晋三首相は、国連演説(9月20日)の中で、「史上、最も確信的な破壊者」「独裁者に、ここまで放恣にさせた」「必要なのは、対話ではない圧力なのです」「『全ての選択肢はテーブルの上にある』とする米国の立場を一貫して支持」といったフレーズを用いて、「危険な米・朝舌戦」に参戦した。

 こうした状況下での国際社会の関心は、物資や金銭の欠乏を招き、ギブアップに至らせる制裁の「効果」のほどである。しかし、かつて日本の場合は、先の大戦において「欲しがりません、勝つまでは」と継戦意思を高揚させた。中国の毛沢東国家主席は、「ズボンを穿くことができなくなっても、核開発を進める」と決意した。それは、さほど昔の話ではない。ロシアのプーチン大統領は、「北朝鮮は、草を食(は)んでも核開発を継続する」と見ている。そして事実、1998年の事前通告無しのテポドン1号発射以来、19年間、北朝鮮に「制裁で降参させる戦術」は通用していない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。