2階級特進の可能性がある陳敏爾重慶市党書記(右)だが、「ポスト習」ではない? (C)EPA=時事

 

 日本と中国の政治体制の一番の違いはと言われれば、私は迷うことなく「法治」か「人治」かという点を挙げる。日本は明治憲法制定以来、アジアで随一の法治の伝統を誇る。一方で中国では人治が罷り通り、役人への袖の下が古代から物を言う。清朝最盛期を築いた乾隆帝の権臣だった和珅は、権勢を失い死を賜った時、国家予算15年分の蓄財があったという。同じ18世紀後半に、汚職の権化のごとくいわれた田沼意次などの比ではない。『ニューヨーク・タイムズ』が、温家宝前首相の一族の不正蓄財が27億ドルに上ると報じたように、現代中国にも、人治に巣食う政治腐敗ははびこり続けている。

 人治の国においては、誰が権力を握るかが国家の命運に直結する。10月18日から開催される中国共産党大会にこれだけの注目が集まるゆえんだ。5年に1度開かれる会議における唯一にして最大のポイントこそが、党幹部に誰がなり誰がならないのかという点だ。中国共産党の派閥には、太子党や中国共産主義青年団(共青団)があると言われる。この色分けには本人の出身母体による区分以上の意味合いがある。それは国家との距離感だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。