頭を下げる川崎博也・神戸製鋼所会長兼社長には、定見も哲学も感じられない (C)EPA=時事

 

 日産自動車が無資格者による完成品検査で100万台を超す大規模リコールに追い込まれたのに続き、神戸製鋼所がアルミや鉄鋼で顧客の求める基準に未達の製品を出荷していたことが発覚した。日本の製造業を代表する2社の不正の底流には、「無資格者が検査しても品質には問題がない」「ユーザーの求める仕様に達していなくても安全だ」といった驕りが感じられる。

だが、それ以上に深刻なのは、検査や基準の達成は「事実ではなく、記録だけでよい」とする“員数主義”の考えが見え隠れすることだ。戦前の日本の軍隊に跋扈した現実逃避の精神主義、事実が伝わらないという組織の硬直、昇進のみを目的とするエリート主義が大手企業に広がっているとすれば、日本の製造業は既に瀬戸際に立たされている。

「コスト優先」で「品質に手を抜く」

 神戸製鋼の品質不正はアルミ、銅製品から始まって、鉄粉、鋼材と、本丸にまで次々と火の手が上がった。素材や鋳造・鍛造部品は、ユーザー企業とサプライヤーが半ば固定化され、暗黙の信頼関係ができあがっている。今回、多くのユーザー企業は「神戸製鋼だから」という安心感で、納品にあたっても改めて念入りな検査はしていなかったのだろう。神戸製鋼の納入先はトヨタ自動車はじめ日本のトップに立つメーカーが多く、そうしたユーザー企業が長年、調達を続けてきたことが「神鋼」のブランドとなり、新規ユーザーの獲得にもつながってきた。

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