イラクではクルド人勢力が2014年以来拡張した領域を一両日で失うという大打撃を被ったが、同時期にシリアでは、クルド人勢力が「イスラーム国」の主要拠点のラッカを制圧し、戦果を誇っていた。

10月15日には、シリアのクルド人民兵組織の民衆防衛隊(YPG)が主導し米国に支援されているシリア民主軍(SDF)が、シリアでの「イスラーム国」の主要拠点で「州都」とされてきたラッカに「最後の攻撃」(といった触れ込みの戦闘は、6月にSDFがラッカの「イスラーム国」勢力の拠点を包囲して以来、何度も行われている気がするが)を仕掛け、17日には制圧の完了を宣言した(米軍はなお「ラッカの90%を奪還」と正確を期している)。

「イスラーム国」という、理念で繋がる多様な主体のつかみどころのなさから、シリアやイラクやリビアなどで、「イスラーム国」掃討作戦はしばしば何ヶ月も「最後の戦い」を繰り返し「完全に制圧」との公式発表を繰り返すことになるのだが、今回のラッカ「陥落」はかなり実態を伴っている。

今回の「最後の攻撃」に先立って、ラッカの拠点に立てこもっていた「イスラーム国」の勢力のうちシリア人については脱出を許し、他の反体制派とアサド政権との戦線に移動することを黙認する交渉が、SDFと「イスラーム国」勢力の間で地元有力者を通じて交渉され、成立し実施されたと伝えられていた。外国人戦闘員の処遇は定かでないものの、「イスラーム国」主要部隊が去った後に、ラッカ中央部がほぼ完全に制圧されることは確実だった。

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