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 前回、金本位制が自動調整機能を持つというヒュームの「物価・正貨流出入メカニズム」を紹介した。

 しかし、このモデルは現実とはかけ離れている。実際には、金本位制はもう少し複雑な形で機能した。

 第1に、ヒュームのモデルは、マネーとして金(きん)のみが流通している世界を考えているが、現実には銀行券も流通している。第2に、このモデルでは国際的な決済は金を移動することでなされるとしているが、実際には国際的な資本移動がある。このため、国から国へ運ぶ地金を積み込んだ船で外海が埋まる、というようなことにはならなかったのである。

 そこで、現実世界における金本位制の機能を分析するため、イギリス政府は、1918年に「カンリフ委員会」という調査委員会を設けた(この委員会は、第1次世界大戦後イギリスの早期金本位制復帰を勧告したことで知られる)。

 その説明によれば、金でなく紙幣が流通する世界でも、結果的には、「物価・正貨流出入メカニズム」と同じことが起きる。つまり、2国間でマネーサプライも価格も異なる方向に動き、貿易不均衡が調整される。

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