世界的な原油価格高騰を引き金に、欧州連合(EU)で付加価値税(VAT)の税率軽減をめぐる論争が活発になっている。フランスでは漁民やタクシー運転手らのストライキが起きており、サルコジ大統領はガソリンなどの税率の一時的なカットで市民の負担を減らす案に言及した。しかしドイツなどのEU主要国は単純な減税には反対で、電気や石油を効率的に使うための税率軽減を検討している。 VAT引き下げはサルコジ大統領が五月下旬に提案した。支持率低下に加えて、ストライキが続発したため、「(一時引き下げも)財政措置の選択肢の一つだ」と述べて人気回復を狙ったようだ。付加価値税率はEUが原則一五%以上と決めており、すべての加盟国が財務相理事会などで同意しなければ変更できない。 サルコジ提案にEU加盟国は冷ややか。六月の財務相理事会では安易な税率見直しへの慎重意見が相次いだ。税率を引き下げてもガソリンなどの消費量は減らず、逆に引き下げによる需要増が一段の価格高騰を招く「いたちごっこ」になる懸念が示された。ユーロ圏財務相会合の常任議長、ユンケル・ルクセンブルク首相は「原油高の解決にならないのではないか」と述べた。 EUの行政機関、欧州委員会は、電気や石油を効率的に使える製品についてVATを引き下げるとの提案をしている。省電力型の冷蔵庫やテレビ、蛍光灯型電球などが対象になるとみられる。EUは市民生活にかかわりが深い食品や医薬品、書籍などはVATを最低五%と軽くしており、欧州委員会は省エネ製品の追加をEU加盟国に諮る。

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