IBMは巨費を投じたAI「ワトソン」への規制を回避するべくさらに巨額のロビー活動をした(C)AFP=時事

 

 人工知能(AI)の医療現場への導入が加速している。ご縁があって、筆者もAIの共同研究に参画している。

 研究の中心は多田智裕医師だ。さいたま市で「ただともひろ胃腸科肛門科」を経営している。

 きっかけは多田医師が、2016年10月に筆者が主催する医療ガバナンス研究所の勉強会に参加したことだ。講師は松尾豊・東京大学大学院工学系研究科特任准教授。人工知能研究の第一人者である。

わずか9カ月で論文掲載へ

 多田医師は刺激を受けたようだ。松尾氏に促され、研究を開始した。相棒は人工知能開発のベンチャー企業を経営する青山和玄氏。多田医師の東大教養学部在学中の友人が紹介してくれたそうだ。

 多田医師は幸い、35万枚の内視鏡画像を保管していた。まずは2万枚の慢性胃炎の患者の画像を用い、ピロリ菌感染の有無について研究を始めた。研究費2500万円は自ら負担し、倫理審査は2016年2月に立ち上がった日本医師会の倫理審査委員会を利用した。

 大勢の若手医師・研究者が参画した。読影は、ただともひろ胃腸科肛門科で働く若手の内視鏡専門医、統計処理は野村周平氏(東大医学系研究科国際保健政策学分野助教)、論文作成には当研究所の谷本哲也医師が参加した。連絡はフェイスブック・メッセンジャーなどSNSを用いた。

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