深夜早朝に大胆な(あるいは衝動的にも見える)政策を実施して世界を驚かせるのが、サウジのムハンマド皇太子のトレードマークのようになってきた。

11月4日の夜に「汚職摘発」を掲げて行った、有力王族・企業家・財閥総帥らの大量拘束にはどのような背景や目的があるのか、はっきりしないところが多い。

おそらく、何らかのクーデタのような動きを「阻止」するための措置というよりは、いかなる対向勢力も出てこないように、いわば「予防」のために行った措置と見られる。

第三世代からの初の国王就任を、父サルマーン国王の存命のうちに成就することを目指すムハンマド皇太子が、競合しうる、脅威になりうる人物を、汚職摘発を名目に放逐したのではないかと思われる。

アブドッラー前国王の息子で、国家防衛隊相を勤めていたムトイブ・ビン・アブドッラー王子を更迭し拘束したことは、アブドッラー前国王によって育てられ、国軍と並ぶ規模を持つ国家防衛隊の力を削ぎ、軍・治安機構の統一に向け歩を進める試みと言える。

ムハンマド皇太子が副皇太子から昇格する際にムハンマド・ビン・ナーイフ前皇太子を更迭したが、これもムハンマド・ビン・ナーイフ前皇太子が掌握していた内務省の治安部隊の権限を弱める動きを伴っていた。

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