11月4日夜のサウジの王族・閣僚経験者・企業家の大量拘束で、アラブ世界全体に影響力を持つ汎アラブ・メディア産業の所有者たちが軒並み逮捕されたことは気になる。

汎アラブ・メディアというとカタールが出資したアル=ジャジーラが有名だが、サウジの企業家・財閥も汎アラブ・メディアに出資して、アラブ世界全体にニュースや娯楽を配信してきた。サウジの資本家(王族自身であるか、それぞれに親しい王族が連なっている)がレバノン人ジャーナリストを雇うというのが、汎アラブ・メディアの鉄則と言って良い不動の組み合わせである。

今回拘束された要人の中で、特に次の3人は主要な汎アラブ・メディアを、自らが率いる財閥の傘下に置いている。

ワリード・ビン・タラール王子:初代国王アブドルアジーズの孫。父タラールはアラブ民族主義の隆盛の時代に「自由プリンス」として知られたがメインストリームから排除され、サウジ王族内では傍流に属する。ワリードはレバノン初代首相リヤード・アッ=スルフの娘モナー・アッ=スルフを母としており、レバノンとの関係も深い。所有する投資会社キングダム・ホールディングスが、マードックのニューズコーポレーションに大口出資すると共に、スポーツや映画や音楽などを中心にしたエンターテインメントのアラビア語有料衛星チャンネルであるロターナー(Rotana)の過半数株式を保有する。

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