通常国会が終盤にさしかかった五月十五日、ねじれ国会の主役だった参議院民主党のトップ・輿石東参院議員会長の定例記者会見での冒頭のひとことが記者団を絶句させた。机上に並んだマスコミのマイクや録音機をみて、輿石氏はこう言ったのだ。「せっかくマイクを並べてもらったんだが、言うことはない」 そう言われては身も蓋もない。一瞬ひるんだ記者団だったが、それで会見を終わらせてしまうわけにもいかない。すぐに記者の一人が参院国土交通委員会について尋ねた。この日午前の委員会で、珍しく輿石氏自身が民主党のトップバッターとして質問に立ったからだ。委員会質問は通常、若手・中堅議員に任されることが多く、輿石氏自らが登場するのは、昨年五月以来約一年ぶりのことだった。だが、輿石氏はこの質問にもぶっきらぼうに答えた。「退屈なので質問に立っただけだ。あんまり感想はない」。 白けた空気が会見場を包んだ。 通常国会最終盤での現行憲法下初の首相問責決議の可決、そして与党が内閣信任決議を可決して対抗。こんな与野党の応酬を、新聞やテレビは仰々しく伝えた。だが、新聞の紙面やテレビのニュース番組がお祭り騒ぎで盛り上がっているのとは裏腹に、実際の国会の現場を覆っていたのは、輿石氏の会見に見られるような何とも言いようのない気だるい雰囲気だった。これこそが、この終盤国会の本当の姿だ。

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