対話の舞台に「国連」を選んだ北朝鮮の真意

執筆者:鈴木一人2017年12月18日
訪朝し、北朝鮮の李容浩外相(右)と握手するフェルトマン国連事務次長[KCNA](C)EPA=時事

 

 12月4日に突然発表され、12月5日から8日にかけて北朝鮮を訪問したジェフリー・フェルトマン国際連合政務担当事務次長。この訪問は唐突であっただけでなく、11月29日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射によって「核武力を完成」させたと主張する北朝鮮の次の一手として見られたこともあり、大きな驚きをもって受け止められた。

 果たして、このフェルトマンの訪朝がどのような成果をもたらし、今後の北朝鮮の出方にどう影響するのか検討してみたい。

アメリカ本土も人質に

 今回の突然の訪朝は、国連が主導したものというよりは北朝鮮の招待に基づくものであった。つまり、北朝鮮は何らかの形で対話を求めている、というシグナルを発しているのだが、いきなりアメリカに対して呼びかけるわけでも、また中国を介して交渉を進めるのでもなく、国連を選んだという点が興味深い。

 金正日(キム・ジョンイル)体制の時期には、北朝鮮のミサイル発射や核実験が交渉の材料として位置づけられ、6者協議でのバーゲニング(交渉)の手段としても、米朝直接対話を呼びかける手段としても認識されていた。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)体制になってからは、これらの核・ミサイル活動と外交交渉がリンクしておらず、北朝鮮に対する韓国や中国の呼びかけにも目立った反応を示してこなかった。北朝鮮の対話の意思は、現体制ではほとんど見られなくなっていた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。