アメリカでも中央銀行が必要だ

執筆者:野口悠紀雄2017年12月21日
(C)AFP=時事

 

 これまで述べてきたように、アメリカには恒久的な機関としての中央銀行はなかった。

 独立戦争後の1791年に財務長官アレグザンダー・ハミルトンによって合衆国銀行が設立されたが、永続できなかった。1816年に第2次合衆国銀行が設立されたが、36年に閉鎖された。

 その後は、1864年に制定された国法銀行法によって、国法銀行が独自の紙幣を発行していた。

 当時の代表的な国法銀行として、ファースト・ナショナル・バンクとナショナル・シティ・バンクがあった。

 ファースト・ナショナル・バンクはモルガン銀行の系列下にあった。1890年代にはチェース・ナショナル・バンクを支配下に置いた。

 ナショナル・シティ・バンクは、クーン・ローブが支配していたが、1890年代に石油王ジョン・D・ロックフェラーⅠ世の弟ウィリアム・ロックフェラーが経営に参加して、ロックフェラー家の影響力が強まっていた。

 この制度では、金融危機への対処が難しかった。銀行の紙幣は、危機が生じたときに、発行額を弾力的に増やすことが出来なかったからだ。

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