(C)AFP=時事

 

 1910年11月、アメリカで中央銀行を設立する計画が極秘のうちに討議された。

 ジェームズ・リカーズ『通貨戦争』(朝日新聞出版)は、これを「金融史上最も奇怪なエピソードの一つ」としている。

 会議を召集したのはネルソン・オルドリッチ。会議に参加したのは6人。モルガン家やロックフェラー財閥など金融界から専門家が集った。

 メンバーには、つぎのような通知が送られた。ニュージャージー州ホーボーケンの人気のない鉄道の待避線に、夜陰に紛れて集まるように。そこにプライベート列車が待っている。1人で来ること。新聞記者に絶対に気づかれるな。

 ポール・ウォーバーグは狩猟用ライフルを買い、狩猟に行く格好をして特別車両に乗り込んだ。

 列車に乗り込んでからは、彼らはファーストネームで呼びあった。列車のポーターが彼らの素性を知ったら、友人や新聞記者に伝えるおそれがあったからだ。

 2日間の列車の旅の後、ジョージア州サバンナとフロリダ州ジャクソンビルの中間にある大西洋岸沿いの町ジョージア州ブランズウィックに着いた。そこから船でジキル島に渡り、J.P.モルガンが所有するジキル島クラブにチェックインした。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。