(C)AFP=時事

 

 ニール・アーウィン『マネーの支配者』(早川書房)によると、第1次世界大戦直前の1914年6月、ドイツの中央銀行、ライヒス・バンクの総裁ルドルフ・フォン・ハーフェンシュタインは、ドイツの大手銀行の経営者を招集して、「今後3年間で流動性を2倍にする必要がある。銀行は通貨を銀行内に止めずに、必ず流通させるように」と言った。この目的は戦費調達の手段を確保することであった。

 ハーフェンシュタインは次のように考えていた。「イギリスは、ドイツの経済発展と軍事力に嫉妬し、悪意を抱いている。それが世界大戦の根本原因である」

 彼は1914年9月にこう書いた。「経済活動を継続する前提は、伝統的な信用供給機関の積極的な活用、つまりライヒスバンクの活用である」

 ドイツ国民は、金貨や宝石をライヒスバンクが発行する紙幣と交換するよう奨励された。これによって、政府は戦費調達の強力な手段をえた。ライヒスバンクのプロパガンダ用のポスターは、つぎのように言っていた。

「我が祖国に金貨を! 私は防衛のために金貨を差し出し、その名誉ある代償として鉄を受け取った。国家の金準備を増やせ! あなたの金と宝石を、金事務局に持ち寄ろう」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。