マネーの魔術史 (34)

「ドイツが必要とするものは、紙幣を印刷して賄う」

執筆者:野口悠紀雄 2018年1月18日
エリア: ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 ニール・アーウィン『マネーの支配者』(早川書房)によると、第1次世界大戦直前の1914年6月、ドイツの中央銀行、ライヒス・バンクの総裁ルドルフ・フォン・ハーフェンシュタインは、ドイツの大手銀行の経営者を招集して、「今後3年間で流動性を2倍にする必要がある。銀行は通貨を銀行内に止めずに、必ず流通させるように」と言った。この目的は戦費調達の手段を確保することであった。

 ハーフェンシュタインは次のように考えていた。「イギリスは、ドイツの経済発展と軍事力に嫉妬し、悪意を抱いている。それが世界大戦の根本原因である」

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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