「カテゴリー別生産コストカーブ」(「BP」社の資料より、筆者提供)

 

 先日、都内某所で「2018年の原油価格見通し」のお話をさせていただいた。質疑の中で、100人くらいの聴衆の前方に座っていた方が「サウジアラビアの原油生産コストはいくらぐらいですか?」という質問をされた。

 筆者は、資料の一部としてお配りした英国エネルギー大手「BP」調査部門トップのスペンサー・デール氏が2015年10月に行った講演録『石油の新経済学』で紹介している、「カテゴリー別生産コストカーブ」のグラフを示して、次のように回答した。

 ――正確なところは分からないが、2015年時点でBPは1バレル当たり10~20ドル程度と見ていたのではないか。

 ――だが重要なのは、実際の生産コストよりも「国家予算」を維持しうる価格だ。

 2018年のサウジの国家予算は石油収入1280億ドルで、520億ドルの赤字(歳入2088億ドル、歳出2608億ドル)となっている。ラフな計算では、予算前提として50ドル台の油価を織り込んでいると見られる。

『ブルームバーグ』が報じているサウジ財務省筋の情報では、2023年になってようやく、生産量が今よりも多い1103万BD(バレル/日量)、油価75ドルを前提として財政がバランスする由。つまりサウジは、脱石油を目指す過程で石油収入に頼らざるを得ないというジレンマに陥ることになる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。