カリブ海のジャマイカのビーチ。1作目の舞台にもなったが、フレミングにとって念願の別荘地だった

 

 今回は、いまから半世紀前の1962年に公開された、ジェームズ・ボンド映画の第1作『ドクター・ノオ』の話をしよう(邦題は『007は殺しの番号』、日本公開は1963年)。映画の舞台となるのは、カリブ海で3番目に大きいジャマイカ島。新たなミッションを帯びたボンドは、ロンドンからアメリカ本土を経由して、同島の首都キングストンにある国際空港に到着する。搭乗したエアラインは当時、世界一との誉れが高かったパンアメリカン航空(PAN NAM)だが、1991年に経営破綻して現在は存在しない。時の流れを感じさせる場面でもある。もともと1927年にフロリダとキューバを結ぶ航空会社として設立され、カリブ海に路線網を張り巡らせていた。

 映画の中の話だが、イギリスは海外での情報収集のため、秘密諜報機関MI6の支部(ステーション)を各国に置いている。ジャマイカ支部も例外ではなく、目と鼻の先にあるキューバ関連の情報収集や人的往来をモニターする役割を担ってきた。

 映画の冒頭では、ジャマイカ支部のストラングウェイズ所長と、新米のイギリス人女性秘書が暗殺され、行方不明になる。MI6本部との無線による定時連絡が遮断され、工作員が行方不明となったことで、当事件を解明するべくボンドが派遣された。

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