空中浮遊する少年(『ジュピターズ・ムーン』より)2017(C)PROTON CINEMA-MATCH FACTORY PRODUCTIONS-KNM

 

 2011年3月に勃発した、シリア内戦。そのあおりを受け、国民の約4分の1にあたる500万人以上のシリア人が国外に脱出し、ヨーロッパをはじめとする各地で難民生活を送っている。

 この「難民問題」は、ヨーロッパの政治や社会に深刻な影響を及ぼしている。特に、難民問題を「危機」ととらえ、その排斥を唱える極右勢力の伸長は著しく、欧州社会そのものの不安要因となりつつある。

 そんな中、1月27日に映画『ジュピターズ・ムーン』が公開される(配給:クロックワークス、新宿バルト 9 ほか全国ロードショー)。ハンガリーでのシリア難民問題を背景にしたSFエンターテインメントだが、その内容は深い。

 監督は、ハンガリー出身のコーネル・ムンドルッツォ(42)。2002年のデビュー作『Szép napok(英題:Pleasant Days)』でロカルノ国際映画祭銀豹賞やソフィア国際映画祭グランプリなどを受賞。2014年には『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ&パルムドッグを受賞するなどの実力派だ。

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